『君の膵臓を食べたい』を観て泣くチョロさ

 こんなチョロさを大事にしていきたい。

 途中までは泣くなんて思わなかった。なぜかというと、設定とか話の進み方が物語として、ありがちなものだったから。物語としてありがち、つまり現実味がない話。クラスでも一位二位を争うような美少女が「君のことは前から気になっていたんだ」と言って、友人すらいない地味男子にまとわりついてくるわけがない。それこそライトノベルとかにありそうな話である。他にもありがち設定はたくさんあって、咲良が好きな本が『星の王子さま』だったり、他にもあったけれど忘れてしまった。現実味のなさと陳腐さで満ちた話だったのは確か。

 だから実際、どうしてあんなに泣いてしまったのかを言葉で説明しろと、言われてもできない。堰が決壊してしまって、五回くらい頬を涙が流れた。強いて言うならば、俺の性質?特性?のせいかもしれない。これもどうしてだか知らないけれど、誰かが泣いている映像を見せられると自分にも涙がこみ上げてくる。例えば『映像の世紀』で戦火にさらされてどうしようもなく泣いている人々を見るときも、クライマックスシーンを詰め込んだ映画の予告編を見るときも。感情移入しやすいのかもしれない。チョロい。涙の多かった後半に俺が泣いてしまったのはこれのせいだったのかも。

 あとは、俺が男子校出身で共学に幻想を抱いていることも要因に挙げられるかもしれない。共学の惨状を知る人間にとっては、この作品内の高校は夢物語に見えてしまうようだけれど、共学を知らない俺はあれをそのまま受け入れてしまう。つまりは素直に見ることができた。素直に見るってことは感情移入しやすかったってことだと思う。

 

 文句なく感動したところももちろんあった。自分の頭の中で人間関係を完結させてしまうという主人公が、咲良の死後に共病文庫を読んで咲良の心中を読むことになった回想の場面。主人公が本当に変わろうと決心したのはあれがあったからではないかと思っている。咲良が自分に対して抱いている感情は、自分の想像するものとは全く違うもので、それがあったからこそ「想像だけで完結するような人間関係はやめよう」と。なるでしょうねそりゃ。

 マジで泣いてしまったのは病院を抜け出して花火を観に行ったところ。主人公が「君のことを心配しているんだよ!」と言ったところで泣いてしまった。ここでなぜ泣いたのかは分からない。このシーンは咲良の死後、回想シーンでも出てくる。「友人も恋人も必要としない君に必要とされていることが分かって、嬉しかったんだよ」みたいなことが咲良の日記にあった。ここも本当に泣いた。今書きながら思い出して涙がこみ上げている。

 

 最後に「君の膵臓を食べたい」のメール。内臓を食べると内臓の持ち主の魂が食べた人の中に残るらしいよ?と咲良が言っていたけれど、そのメールを送った時点で主人公は変わろうとしてたのか。実際してたか。ガム貰ってたし。咲良の魂が欲しい、つまり僕とは正反対な君のようになりたい。

 

 おわり。